東日本大震災の際、世界中の人達からの義援金や励ましのメッセージを受け取りました。しかし、そのほとんどを目にすることなく、終わってしまっています。このサイトにそれらの好意をたくさん残して、多くの人に伝えて行きたいと思います。
東日本大震災で、シンガポールの英字紙ストレーツ・タイムズは16日、「静かなる威厳」と題した論説を掲載。危機的状況下でも礼儀と忍耐を忘れない日本人を称賛した。
2011年(平成23)3月11日午後2時46分、日本は三陸沖を震源とするマグニチュード9.0の東日本大震災(東北地方太平洋沖地震)に見舞われた。
東北地方から関東地方までの太平洋沿岸を大津波が襲い、多くの街があとかたもなく流され、戦後史上最大の死者・行方不明をだす大災害となった。
地震による被害は首都圏にまでおよび、大規模な停電が発生。
電車はストップし、道路は大渋滞となって、数百万人が徒歩での帰宅を余儀なくされた。
この東日本大震災のニュースは、地震発生直後から世界中で報道され、各国が日本の惨状に驚愕した。
しかし、それ以上に各国が驚いたのは、大震災に襲われ、未曽有の被害を受けながらも、秩序を失わず、冷静に行動する日本人の姿を目にしたことである。
じっさい、海外で大規模な災害が発生したときには、暴動や略奪といった行為がごく当たり前のように起きている。
2005年(平成17)8月末、ハリケーン・カトリーナに襲われたアメリカ・ルイジアナ州のニューオリンズでは、大規模な略奪行為が発生し、被災地はまるで内乱のような状態に陥った。
避難した人々の財産を、ほかの人間が手当たりしだいに盗むという略奪行為が横行した。
さらに、業者がハリケーン被災者の窮状につけこみ、ホテルの宿泊料や発電機を通常の数倍に値上げするといった、あからさまな便乗値上げも見受けられた。
こうした現象は、世界のあらゆる場所で起きている。
2010年(平成22)1月に大地震に見舞われたハイチの首都ポルトープランスでは、略奪集団がうろつき、商店などを物色して品物を手当たりしだいに持ち去っていった。
また、家人が避難して無人となった家に入りこみ、食料を持ち出すといった行為も頻発。 警察官が空砲で威嚇しても効果はなく、街は無法地帯と化した。
2008年(平成20)5月に発生した中国・四川大地震のさいも、援助物資をめぐって暴動が起きた。 ナンバープレートのない軍用車が援助物資をもちだそうとし、抗議する住民と警察が衝突している。
「秩序正しき日本人」を支えるもの
しかし、日本はちがった。
震災後の食料・燃料不足から、やむにやまれず窃盗をおこなうといった事件や、住民が避難した留守宅への空き巣、休業中の商店・金融機関に侵入する店舗荒らしなど、少なからずあった。
それでも、群衆による大規模な略奪や強奪は、どこの被災地でも起こっていない。 男性が女性を、若い人が老人を助け、食べ物を分け合った。
大規模停電に見舞われた首都圏でも、徒歩で帰宅する人々は、誰もが黙々と列を作って歩き、怒鳴ったり暴れたりする人はほとんどいなかった。
大渋滞に陥った道路でも、クラクションを鳴らす人はおらず、みな冷静に事態を受け止めた。
こうした日本の状況は、海外メディアをつうじて各国に報道され、世界中から日本にたいする称賛の声が上がった。
アメリカ紙は「日本人の忍耐力と回復力は尊い」と報じ、イギリスのインデペンデント紙は、その紙面を日章旗を象徴する白と赤で満たして、英語と日本語で「がんばれ日本、がんばれ東北」と激励のメッセージを入れて報道した。
じつは、日本人の秩序正しさ、冷静さが世界から注目されたのは、今回の東日本大震災がはじめてではない。
1995年(平成7年)1月に起きた阪神・淡路大震災のさいも、群衆の暴徒化は見られなかった。
人々はみな助け合い、力を合わせて災害に立ち向かう姿があった。
アメリカ・コロンビア大学にある「ドナルド・キーン日本文化センター」所長のグレゴリー・グルーグフェンダー氏は、アメリカのニュース専門放送局CNNによる取材のなかで、 「日本人の節度ある態度は、地域社会への責任を何より重んじる文化の賜物ではないか」 と述べている。
日本文化の根底には、共同体意識があり、災害などのストレス下では、その意識がさらに強く働くのではないかというのである。
長い歴史のなかで培われてきた日本人の共同体意識。
危機的状況においてもこのように秩序と冷静さを失わない姿は、日本人の誇るべき国民性である。